課題


課題

「益城町木山蛭子町のまちづくりに貢献するBIM」


BIMは3次元の形状データに、物質的性質や値段など形状以外の様々な情報を一体化してデータベース化したものです。そのおかげで建設に必要な様々な情報が確実に伝達できるだけでなく、データ処理による分析や予測があらゆる側面で可能になり、設計の精度が大きく向上することも期待できますし、機械加工の自動化などと連携することで、複雑で多様なデザインの施工を容易にすることにも繋がります。

しかし、BIMデータの存在はこうした設計と施工の業務改善という建設業界の中の価値に留まらないことが、新たに注目を集めつつあります。これは現代の都市空間がIoTと呼ばれる常時接続の情報端末化し、膨大なデータの流れを人工知能で処理することが日常化しつつある社会状況に呼応したものです。いまや人間の社会活動はオンライン上と現実空間の両方に一体的に展開しつつあり、そこでは現実空間をできるだけ忠実に再現した情報が大きな役割を持つからです。たとえば、より少ないエネルギーで最も効果的な夜間照明を点灯させるには、照明の配置、明るさ、空間形状などのデータが、利用者の活動とともに存在すれば自動化することができます。このように考えると、建築そのものが、データを使った活動支援の仕組みの一部になることになります。つまり「実体とデータの組み合わせとしての建築・都市の利用価値」が社会に貢献できるデザインの目標にできると思われます。そうすればBIMは完成後にも追加修正されながら使われ続ける生きたデータになるでしょう。

さて、具体的な対象は益城町木山蛭子町のまちづくりです。大きな被害を受けた平成28年の熊本地震からの復興の途上にある益城町では、防災機能を向上することと、にぎわいを生み出すこと、地域の歴史を継承することを同時に考えた難しい目標に取り組んでおり、その一つが木山地区にある横町線の拡幅に伴うまちなみ整備の活動で、既に住民の皆さんの意気込みが「横町線まちなみBOOK」に示されています。そこで、横町線沿線の中で特に象徴的であると考えられる木山橋から木山神宮にかけての区域を対象に、官民一体に協力し自ら作り上げていこうとしている活動をBIMの手法やデータを利用した「実空間とデータの組み合わせとしてのまちづくり」として実現する提案をしてください。

地震災害の教訓をまちづくりに活かすこの試みは全国のモデルにもなり得ます。例えば、生きたデータとしてのBIMをコミュニケーションのプラットフォームとすれば遠く離れた応援団までを利用者と捉えることで、これまでにない地域と地域外との関係が創造できる可能性があります。対象区域には木山神宮の参道や(仮)神宮の森広場、秋津川の桜並木などの公共的要素だけでなく、私有地と既存建築物が存在していますが、保存や既存物活用などの判断や、時系列の発展なども自由に提案して構いません。ただし民間商業施設を予定している特定敷地Aの将来像は必ず含んでください。これは単なる「かたち」としてのデザインではなく、継続的ににぎわいや交流を創出する「しくみ」としてのデザインを、空間にある「もの」と「ひと」のデータによって実現することだと考えています。